京都で働くエンジニア社長の自戒ブログ

気づいた当たり前を、さも大事なことかのように発信します。

計測の意義

事業拡大に伴って、採用計画を考えていたのですが、 その中で計測に対するインサイトが得られたので書き留めておきます。

大変ありがたいことに、弊社で運営しているサービスを利用してくださっている施設様の数が増えてきました。 同時に、イレギュラーな問い合わせの件数が増えてきており、緊急度が低いが重要な業務に工数を割くことが難しくなってきたと感じていました。 そんな中、来期の予算計画を立てるため、どの業務に、どの程度の工数を割いているかの実態を把握し、業務上のボトルネックを特定するため、 1週間ビジネスサイドのメンバーが何にどの程度時間を割いているのかを記録してみました。

結果として、この施策は想定以上の効果を発揮しました。

まず前提として、現時点でメンバーの数はまだまだ少ないため、ビジネスサイドのメンバーで積極的な分業は進めておらず、マーケ・セールス・カスタマーサクセスを全員で行っています。 元々の予定では、何%の稼働をどの業務にどの程度振り分けるべきかを決定するために上記の分析を行っていたのですが、データの取得をしたことによって、至極当たり前の事実に気づくことができました。

それは、新規顧客獲得は1顧客あたりの獲得コストを変数とするため、工数の増減はこちらの都合でコントロールできるが、 既存顧客の維持コストは、すでに獲得している顧客数を変数とするため、工数のコントロールは難しいということです。

つまり、「何割の稼働をセールスに割くべきか?」という問いの立て方自体が間違っており、 正しくは、「チャーンレートを1%未満に抑えるためには、カスタマーサクセスの工数は顧客当たりでどの程度必要になるのか?」であるということに気付きました。

最近の問い合わせ件数の増加は、導入施設数に相関しており、月当たりの新規獲得施設数とは無関係であることは考えれば至極当然なのに、 なぜか最終的なゴールとして、最適なセールスとカスタマーサクセスのアクションの比率を導こうとしてしまっていました。

結果的にビジネスサイドで行われている業務を、

  • 既存資産に相関するアンコントローラブルな業務
  • 余剰工数を投下するコントローラブルな業務

以上二つに分解して設計する必要があるということがわかり、 比率ではなく、維持コストの具体化と、最適な余剰工数投下量を探しましょうというネクストアクションを定義して、今日の会議は終わりました。

これらは全て、初期の計測意図とは基本的には無関係に得られた知見です。

計測の意義について

さて、本題に戻って、計測に関して得られたインサイト言語化していきます。

僕が認識していなかった計測の意義の一つは、あえて情報を落とすことです。
連続的に認識していた現象を、ある程度の大きさに区切ることで、現象の複雑性を下げることができます。 複雑性を下げてモデル化した結果、現実を定量データとして計測できるようになります。
詳細を無視することで、質的データを量的データとして認識できるようになるということです。

こうして得られた数値情報に対する定性分析を通して、量的な数値に対する説明変数を考えた結果、 これまで混同していた業務の発生要因が明確に異なっていたことに気づきました。

情報を落とした結果、新しい知見が得られたのです。

この体験を通して、計測に関して、実施前の設計段階ですでに大きな価値を持っていることを学びました。 解像度を高めるには、ミクロとマクロ、具体と抽象を何度も往復する必要がある。 言語化してみると至極当たり前ですが、やはり身をもって体感すると全然違いますね。

最後にこの知識を使いやすくするために、一言でまとめて締めたいと思います。

情報を制限して同質化することで、新たに得られる情報がある。

参考になれば幸いです。 それでは良い週末を〜〜